『こんな話、聞いていませんでした。』契約の日に初めて知ったこと
「少し考えさせてください。」
その一言が、どうしても言えませんでした。
契約書を目の前にした私たちは、分からないことがあるのに、質問する勇気も、持ち帰る勇気もありませんでした。
これは、樹木葬をご検討される方から実際によく寄せられるご相談をもとに、個人や施設が特定されないよう再構成したストーリーです。
第3話 「今さら断れない…。」
契約書がテーブルの上に置かれました。
「それでは、こちらにご署名をお願いいたします。」
お寺の方は穏やかに話されます。
決して強い口調ではありません。
むしろ、とても丁寧でした。
でも、私の頭の中では別のことを考えていました。
(さっき説明された内容、本当に理解できたかな……。)
妻も黙ったまま契約書を見ています。
「あなた……。」
小さな声で妻が私を見ました。
きっと同じことを思っていたのでしょう。
でも、部屋は静かでした。
契約のために時間を取っていただき、お寺の方も待ってくださっています。
今さら
「今日は持ち帰ります。」
とは、とても言えない空気でした。
「みなさん、このように進められていますので。」
その一言で、私は
(うちだけ止めるわけにはいかない。)
と思ってしまいました。
ペンを手に取ります。
妻も静かにうなずきました。
サインを書き終えたあと、お寺の方は笑顔で言いました。
「これから末永くご供養させていただきます。」
私たちも笑顔でお礼を言いました。
でも、その笑顔はどこかぎこちないものでした。
帰り道。
妻が窓の外を見ながら言いました。
「本当に、これでよかったのかな。」
私はすぐに答えられませんでした。
家に着いてから契約書をもう一度読み返しました。
すると、
「そういう意味だったのか。」
と思うことがいくつもありました。
その時、初めて思ったのです。
「あの場で、一度持ち帰らせてもらえばよかった。」
と。
編集部より
契約の場では、緊張や遠慮から「質問しづらい」と感じる方は少なくありません。
特に、お墓や供養は人生で何度も経験することではないため、
「自分が知らないだけなのかもしれない。」
と思い、聞くことをためらってしまうケースがあります。
しかし、本当に大切な契約であればあるほど、
「一度持ち帰って家族と相談したい」
と伝えることは、ごく自然なことです。
安心して契約できるかどうかも、お墓選びの大切なポイントです。
契約前に確認したいこと
契約書は当日持ち帰ることができますか?
- 分からない言葉は、その場で質問できますか?
- 家族全員が内容を理解していますか?
- 「あとで説明します」と言われた内容はありませんか?
- 少しでも迷ったら、その日の契約を見送ることはできますか?
今回学んだこと
契約で一番大切なのは、急いでサインをすることではありません。
納得できるまで質問し、自分たちの気持ちに迷いがない状態で決めることです。
「一度考えさせてください。」
その一言は、決して失礼なことではありません。
次回予告
「追加費用はありません。」
そう聞いて安心していた私たち。
しかし後日、お墓の費用と供養に関する費用は別だということを知ります。
あなたなら
どうしますか?
契約書を前にすると、「ここで断ったら失礼かもしれない」と感じる方もいらっしゃいます。
もし同じ場面だったら、あなたは「一度持ち帰って考えます」と伝えられるでしょうか。
ご家族と一緒に、ぜひ一度話し合ってみてください。